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ごあいさつ
あけましておめでとうございます。本年もよろしくおつき合い願います。 年末にハーフマラソン走って来ました。
無謀なチャレンジに友人は
「2時間以内で完走できたらキャバクラ招待したる」
と言ってくれました。 |
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| 46歳の師走。(後編) |
12月16日(日)・曇り・気温5.5度。
結局、男は何の練習もしないままハーフマラソンの日をむかえてしまった。
それどころか金曜日の夜から土曜日の朝まで飲み続けた酒がまだ少し残っている。
この状態で21kmを走るのか、何のイメージもできないまま会場入りした男は目を見張った。
そこは、カラフルなウェアを着た4000人ものランナー達でごったがえしていた。
この寒さの中、タンクトップに短パン姿でウォーミングアップをしている人が何人もいる。
「俺の来るところやなかった…帰ろ」
「リタイヤしてもええねんよ」会場まで車で送ってくれた妻の言葉が頭をよぎる
「コースの途中に収容バスが待機してるって、リタイヤしてもはずかしい事ないんよ…」
走りきるかリタイヤかそれは、これからの男の人生に微妙に影響する。
収容されるのはやっぱりカッコ悪いし、今後バスを見るたびに思い出してしまうだろう。
バスというあだ名を付けられかねない。どうしてもそれに乗るわけにはいかなかった。
男はストレッチをしながら少しづつ意識を臨戦モードにもって行った。「っしゃっ!!」
軽く走ったら胃の中から酸っぱいものが上がってきた。「やっぱり帰ろ…」
「スタート1分前です!!」
もう後戻りできない男の目は蛇のようにヌラヌラと光りだし、なにかぶつぶつ言い出した。
「ウ〜ウッ〜ウッ、アベベよ俺に降りてこい」男は発狂していた。
スタートの合図も耳に入らぬままワラワラと先頭の方から走り出した。
男は流れのままにもまれていた。
沿道で人々が旗をふりながら歓声を送る、テレビで見なれた光景にちょっと可笑しさを感じた。
「結構スローペースなんや、みんなで走るのなんか楽しいな…」
3km地点。
男は自分に最適なペースメーカーをさがした。「速くもなく遅くもなく完走できそうなやつ…」
その時、茶髪の若者がゆっくり男を抜かして行った。
黒いTシャツの背中には、白くぶっとい筆文字で「泡盛」と書かれていた。
「よしっこいつや!」男は茶髪の後ろにピッタリくっついて走った。
気がつくと、ある旋律が頭の中を駆け巡っていた「♪ハイサイオジサン〜ハイサイオジサン〜」
それが男のピッチになった。
6km地点で黄色い歓声が飛んだ「おとうさんガンバレ〜!!」「あんた〜無理しなや!!」
息子と妻と近所の人たちが応援してくれた。「おうっ!!ゴールで待っとけ!!」
ふつふつと力が湧いてきた。「♪ハイサイオジサン〜ハイサイオジサン〜」 やがてコースは山道に入る。
沿道の歓声が途切れ、パラパラパラと靴音だけしか聞こえない。
集団で大移動しているというのにとても静かで不思議な世界に迷いこんだようだった。
これがランナーズハイか。まだ少し楽しい気分が続いていた。ここまでは…。
コースは中盤からジェットコースターのようにアップダウンがきつくなった。
いよいよ難所へとさしかかり、急な上り坂がしばらく続く、地獄のはじまりだった。
まるで登山道を一歩一歩、登っていく感じだった。ここで日頃の練習の差が出るのだろう。
今までなんとなくあった集団のペースがバラバラに崩れ出す。
「泡盛」が立ち止まった。
ここで止まったら二度と走れないと思った男は「泡盛」を捨て、フィールドホッケー部の
ジャージを着た女子大生に乗り換えた。お尻が丸くてかわいい。
男は変態パワーで難所をクリアして行った。
10km附近、坂を登りきったところで、折り返したトップ集団と、ものすごいペースですれちがう。
人間とは思えなかった。「俺はマラソンをナメていた、まだ半分か〜これは無理かも知れん」
気弱になりかけた時、2度目の上り坂の手前に収容バスが止まっていた。
「あんた、リタイヤしてもはずかしい事ないんよ…」
残り8km…1kmがめちゃくちゃ長く感じる。2時間30分でゴールが閉る。
「間に合うのかこのペースで」しかし男の両足は壊れかけていた。
ここで男は不思議な体験をする。
沿道のおばちゃんにもらった氷砂糖を口に入れたとたん肉体と精神が分離した。
「走っている俺、それを見ている俺」男は遠く前方を走る自分の姿を見た。
「前を走ってるのが本当の俺で、ここにおるのが、ちょっと過去の俺」頭も壊れだしていた。 ラスト4km…「泡盛」が男を静かに抜いていった。
「こいつ〜走っとたんか」男にあのリズムが甦えった。
ラスト3km…ラスト2km…あちらこちらに歩いているランナーがいた。
男は走り続けていた。
「2時間以内で完走できたらキャバクラ招待したる」という友人との約束だけを支えに。
記録2時間07分完走。総合順位2453位(完走3176人中)
キャバクラこそ逃しはしたけれど、顔をゆがめながら次々にゴールに飛び込んで来るランナー達を男は拍手で迎えた。そこには4000のドラマがあった。
2008 - 01 - 16 - wed
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