イラスト/福田泰孝
Vol.1 自転車
寒中見舞い申し上げます。
本年もよろしくお願いしたします。

みなさんは自転車に乗れるようになったのは何歳の頃でしょうか。
そしてどのようにして乗れるようになったのでしょうか。憶えてますか。

実は私、その記憶が全くないのです。
たぶん補助輪付きの自転車に乗っていて、どこかのタイミングで親が補助輪を外し、
何度も転びながらしているうちに乗れるようになったのではないかなあと思う。
しかし、これもこのような光景をテレビかなんかで見て、
それを自分のことのように思っているのかもしれない。定かでない。
そのかわり、私が息子に自転車を教えている光景、
息子が自転車に乗れるようになったその瞬間の光景は鮮明に憶えているのです。
ま、まだ十数年しかたっていないので、憶えていて当然と言えば当然ですが、
ほかの記憶より鮮明で且つ、よく思い出すのです。

思い出すキーワードは「目標」という言葉です。
「目標」という言葉を聞いたり見たり考えたりした時に、その時の光景が頭に浮かぶのです。


広い公園に息子と二人で行く。
自転車の荷台を押えて押してあげる。
何メートルか進んだら、そっと密かに手を放す。
二漕ぎくらいしたら、息子はヨロヨロとしてたおれる。
「惜しかったなあ」と言って、また荷台を押えて押してあげる。
今度は手を離しても、それを気付かれないように体を離さずついていく。
一回目よりはすすむけど、また倒れる、また転ぶ。
何度か同じように挑戦する。
悔しさ、恥ずかしさ、悲しさ、怒り、いらつき、いろんな感情が息子の顔に浮かぶ。
私は息子の様子を観察し、肩に力が入っていることと、
目の前(前輪およびそのちょっと先)ばかりを見ていることに気づく。
私は公園の周辺を見まわし、一本の大きな木を見つけ、息子に言う。

「肩の力を抜いて、真正面に見えるあの木だけを見て漕いでみろ、
他は見るな、いいな、あの木だけを見て漕ぐんだぞ」

荷台の手を離すと、息子は一気に10メートルくらい進んで転んだ。
立ち上がった息子は笑っていた。
2、3回挑戦し、最後は目標の木にぶつかって転んだ。

 

新年に入っても、世界同時不況、100年に1度の金融危機、派遣切り、
人員カットと、暗く重たい言葉ばかりが飛び交う。
そんな中、浅田真央や石川遼など、世界で活躍するアスリートやアーティストが
輝いて見える。羨ましく見える。
彼ら、彼女らは小さい時から脇目を振らず、一つの「目標」へ向かって進んで来た、
進んでいる人たちだ。
彼ら、彼女らには不況なんて全く関係ない。
ビジネスの世界でも、人に負けない技術や能力を持っている個人や企業が勝ち残る。
そんなことを思った新年1月。
さあ、今年は周りの動きに惑わされず、しっかりと目標を定め、
それに向かって進んでいきましょう!

年の始めなのでちょっと真面目になってみました。

2009-01-26

 
 

Vol.1  自転車
Vol.2  面接
Vol.3  心理
Vol.4  大阪の喫茶店
Vol.5  50歳
Vol.6  上海、南京、そして不要
Vol.7 2:00:57
Vol.8 政権交代
Vol.9 向上し続ける人
Vol.10 情熱
Vol.11 博士